キックボードのタイヤを追加工? 難加工にチャレンジ!
『ホイールの内側を10mm切断して、R面取り加工をしていただきたい』
ご家族でキックボードを楽しんでおられるお客様から、
このようなご相談をいただきました。
『路面の凹凸を吸収し、方向転換の際の安定性を向上させるため、
ソフトで太いホイールに換えたらどうか?と考え、
交換部品を探しましたが入手困難で、
太いホイールの取扱がありませんでした。
そのため、スケートボードのホイールの中から
なるべくソフトで直径の大きいホイールを購入しました。』
ご愛用のキックボードは、『K2 Pro Kick』という、
今は販売されていない製品だそうです。
『太いホイールが届き、取り付けようとしましたが、
キックボード本体のホイール取付部にぶつかって取り付けできませんでした。
自分でカッターナイフで削ろうとしましたが、削れませんでした。』
お客様はインターネットで「ゴム 加工」と検索し、
数社からゴム板からの加工はできるが既製品の加工はできないと回答があり、
再度「ゴム 追加工」というキーワードで検索したところ、
できるところが数社見つかったそうです。
弊社にもホームページの問い合わせフォームでご連絡をいただきました。
送っていただいた画像だけではどのようなものなのか、硬いのか軟らかいのか、
構造がどうなっているのかがわからず、
加工の判断が難しかったです。
「硬度78Aの柔らかめのウレタン」という情報が得られたので、
もしかしたらいけるかもしれないと少し希望が持てました。
ちなみに、「硬度78A」は、デュロメータタイプA (ショアA)という硬度計で測定した数値です。
弊社では硬度90°のウレタンゴムの加工をしているので、
材質としては問題はなさそうだと判断しました。
ただ、加工時の製品の固定が難しく、
このような既製品の厚みを削るという作業に不安がありました。
社内でも「できそう」「無理なんじゃないか」と意見が分かれました。
しかし、実物がどんなものか確認せずに心配していても仕方ないので、
少しでもできる可能性があるのならばと思い、
失敗の可能性もあるが、一度製品を確認してトライさせてくださいとお客様にお願いしました。
ポリエチレンフォームでホイールを固定するための治具を作り、
端から10mmのところに機械の刃物を当てました。
ホイールに刃物が入ったので作業を続けましたが、
15mmぐらい進んだところで機械がストップしてしまいました。
それでも諦めずに、製作担当者が別の機械で再度トライしてくれました。
チップソーは、作業台の上で円盤状の刃物が回転する機械で、
硬い材料が得意、加工できる厚みに制限がある(作業者が危険なため)のですが、
ギリギリまで刃物の高さを調整してチャレンジしてくれました。
結果、切断面もきれいに加工できたので、
写真でお客様に仕上がりを確認していただきました。
「そのまま作業を進めてください」とおっしゃっていただいたので、
2個のホイールを無事に納品することができました。
残念ながら、4個中最初のトライ品1個は途中で機械を変更したため、
指定の寸法が出せず、NG品となってしまいました。
(申し訳ございませんでした。)
ホイールの完成品がこちらです。
交換前のキックボード
交換後のキックボード
『切断面も鮮やかで、丸め加工も丁寧にしていただきました。
キックボードへの取り付けも成功し、太いホイールへの交換も完了しました。
ありがとうございました。』
お客様からのお礼のお言葉と写真をいただき、
私どももお役に立つことができて本当に嬉しいです。
このような加工のご依頼は初めてで、
弊社としてもとても良い経験をさせていただきました。
きっと製作担当者の自信にも繋がったと思います。