図形を誤解なく伝えること
「アボガドではなく、アボカド。」
実際のところ、レストランでアボガドサラダと言って注文しても、アボカドサラダがちゃんと出てくる。
言語の役割の一つが、他者とイメージを共有することであるならば、
アボガドと伝えても、その目的は果たされており、問題ない。
”本当はアボカドなのに、あの人間違えているね” と、決して声にならない指摘を受けることがせいぜい。
ところが、日常生活ではなくモノづくりの世界だと、そういったあいまいさや、相手の理解に期待することは危険だとされる。
様々な工程が入る現場では、他者に誤解が生じないようにしておかないと、予期しないトラブルに見舞われる。
生産現場で他者とイメージを共有するための有力なツールに、「図面」がある。
当然、これもことばと同じく、受け取り手に誤解が生じないように、
わかりやすいように製図しなければならないと心がけている(つもり)。
そして、言葉を発することと同じく、製図もまた、難しいと思う。
上記の図面(A)は、下記(B)の形状を示したもの。
見づらくて、わかりにくいな~と私は思う。
そこで、次の(C)のような寸法記載をしてみる。
ずいぶんすっきりして、我ながら良いな~と思ってみたりもするが、
製図上のルールにおいては、(C’)の「不明」と記載した箇所に寸法指示がないとされる。
寸法線が届いていない以上、他の線に対して同じ長さであると定義することはできず、
それに伴って、垂直であるとか、平行であるとか、定義することも危なくなる。
そこで、下記(D)。
切り欠け内部の寸法が交差して、ごちゃごちゃしているが、(A)よりはマシか。。。
ただ、(D)にしても、正規のルールにのっとっているかと言われれば、どうなのだろうか。
寸法線は長さを比較する際にも用いるため、平行線はなるべく近くに書いた方が良いという意見もある。
(D)で言うところの、100mmと60mmの寸法線は近づけるべき、という意見。それもわかる。
結局、何が正解なのか。。。
正解はさておき、本来の目的は見失わないようにしたい。
”イメージをちゃんと伝えて、相手にわかってもらう”
どうも、現段階ではこの問題に決着をつけることができない模様。私の力不足。
実線と寸法線の色を変えたり、CADデータをメールするなど、
いかようにも誤解を避けるための手段はある。
便利な世の中になったと思うと同時に、
こちらがアボガドと言ってもアボカドをちゃんと出してくれる製作担当者や、
それはアボカドのことですね?と確認してくれる人が周りにいるから、私はいつも助けられているのだと思う。
(了)